MVPというこの上ない栄誉に輝いた船水健二。個人戦マッソギマイクロ級二連覇、トゥル2段準優勝、団体戦トゥル、マッソギW制覇という輝かしい成績は、まさに今大会最も活躍した選手として表彰されるに値する。
「でも複雑な心境でした。試合を振り返ると満足していません。圧倒的な強さで勝てませんでしたから。MVPは団体戦が評価されての受賞で、本来ならトゥル、マッソギ優勝の姜昇利選手だと思います。だから、この栄冠は団体メンバーみんなで勝ち取ったものだと思っています」
あの激しい試合ぶりとはまるで別人のようだ。時折照れながら、控えめに自己分析する素朴な青年が素顔の船水なのだろうか。
6歳からテコンドーを始め、この道14年、テコンドーひとすじに歩んできた。
少年部時代、その小さな体に颯爽と黒帯を締め、大人顔負けの、正確で力強いトゥルを演じ、周囲を魅了した。マッソギの試合では、自らを上回る大柄な相手を前に、決して臆することなく、攻め一手の勝負を仕掛ける。その果敢なるスピリッツは、観る者の心を釘付けにした。船水が放つオーラは今も色褪せることなく、国際舞台でも彼の試合は注目の的だ。世界選手の巧妙な試合運びに対し、躊躇することなく真っ向勝負で挑む船水の姿勢はじつに爽快であり、世界の選手たちの心をも捉えた。
15歳で夢の舞台、全日本大会に出場し、最年少デビューを飾った。入賞こそ逃したが、船水本来のスピーディーでアグレッシブルな試合を全うし、その将来を期待させた。それから出場5回目にしてついにマイクロ級優勝を果たす。その前後にはロシア大会、世界大会へ出場、新たな経験が彼を飛躍させる契機となった。
「国際大会に参加し、世界の選手たちの高度なテクニックや精神力の強さにふれて、とても刺激的な経験となりました。圧倒されました!彼らのパワーに。自分にいったい何が足りないのか、どうすべきなのか、まだ入り口ですが見えてきました」
圧倒的な強さで勝つ!それが船水のスローガンである。
今大会、マイクロ級決勝戦で塩尻真視選手を相手に激しい乱打戦の展開となった。結果として勝利したものの、課題は残った。相手のペースに乗せられ、試合の主導権をなかなか握れなかったことだ。
「どんなタイプの選手にも対応できる自分のスタイルを確立しなければならないと思います。日本一になるためには、世界の選手に対抗するには、たくさんの武器、引き出しを持って臨まなければ太刀打ちできません。今はまだ試行錯誤の過程ですが、自分を信じ、納得のいくまで頑張りたい。テコンドーの醍醐味を感じてもらえる試合ができるよう精進します」
船水健二、20歳。テコンドーへの溢れんばかりの思いを胸に、いつも真っ向勝負で臨んできた。不器用までに正攻法で闘う彼のスタイル、そのスピリッツ。彼の魅力は、まさにここにある。少年から青年へと成長し、着実に進化していく船水の、今後の活躍に期待したい。
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