姜三兄弟時代到来か!
兄の金メダルは、弟の誇り、
そして未来だ!!
かつて少年部の黄金期を迎えた荒川道場で、その一翼を担っていた姜昇烈。幼いころより恵まれたセンスを備え、少年部のトップを走ってきた少年も、いつの間にか15歳になっていた。
出場した中学生の部でマッソギ、トゥルの二冠を達成。この成績は、姜昇烈にあっては然るべき結果だが、今大会においては、その表情や姿勢に何故か心動かされるものがあった。
強い意志のようなものが、彼の試合に向ける集中力を通して感じられたのだ。
小学校時代、圧倒的な強さでメダルを独占してきた姜昇烈は、中学を境に転機を迎える。スポーツ万能少年は、小学4年の頃からサッカー部に所属し、エースとして活躍。周囲の期待を背負いながら、テコンドーとサッカーの両立に努めてきた。しかし、中学になると過密スケジュールをこなす過程で心身ともに疲労がたまり、練習にも集中力を欠いていった。結果、試合でも本領を発揮できず、スランプに近い状態に陥った。
それまで順風満帆だった姜昇烈少年が初めて味わう苦い経験。そんな彼に一歩踏み込む力を与えてくれたのが、昨年夏にブルガリアで開催された第7回世界ジュニア選手権大会での日々だったのだ。
「世界ジュニア大会に参加して、とても刺激を受けました。世界の広さや世界選手たちの強さを肌で感じ、自分の未熟さ、やり残していることの多さを痛感しました。いつか必ずここで優勝したいと思いました」
ブルガリアでの経験は、彼の志気を高めただけでなく、友情という宝物を与えてくれた。思春期にあった彼にとって、テコンドーを通して育まれた仲間意識は何よりの財産となった。
特に、同じ年の原海輝(府中)とは波長が合い、盟友であり、ライバルとして刺激的な関係を築けたという。
そして、彼をなお一層テコンドーに近づけたもの、それは兄である姜昇利の活躍だ。今春開催された第15回世界選手権大会で、トゥル3段において金メダルを獲得。偉大なる快挙を成し遂げた兄に、弟は誇りを感じ、言いようもない感動に胸震わせた。テコンドーに賭ける兄の思い、姿勢は、姜昇烈が行くべき道を導く羅針盤となった。
第11回東京都大会では、長兄の姜昇日もトゥル青・赤帯の部を制覇、兄弟優勝を成し遂げた。ここに姜昇利が加われば、鬼に金棒。まるでかつての厳三兄弟を彷彿させる強さ、勢い。姜三兄弟の時代到来だ。
「高校になったら、テコンドー一本で頑張りたい。とにかく練習して、強くなって、いつか兄を越えてみせます!」
迷い道を抜け出た空間は、驚くほどに明瞭で心地よい。志を抱いた少年は、キラキラ瞳を輝かせ、いま、目標に向かっている。
来年の9月に行われる世界ジュニア選手権に向けて、姜昇烈の挑戦はもう始まっているのだ。
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