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20 回全日本大会 特別企画

Special  Interview Part1



20回全日本テコンドー選手権大会

最優秀選手賞 
許 智 成

       (ホ・チソン)

27歳/3段/副師範/荒川道場
テコンドー歴 18年

△第20回全日本大会戦績
・パワーブレイキング 優勝
・トゥル3段 準優勝
・マッソギミドル級 第3位
・団体トゥル 優勝
・団体マッソギ 優勝


△過去の国際大会主な戦績
・ノースアメリカン大会 トゥル1段 優勝
・第14回世界大会 トゥル3段 第3位

△過去の全日本大会主な戦績
・第10回大会 トゥル1段 優勝
・第13回〜第15回大会 トゥル2段 優勝
・第16回〜第17回大会 トゥル3段 優勝
・第18回大会 パワーブレイキング 優勝

少年部より同門で共に練習を積んできた姜昇利曰く、許智成について「誠実な人」と評した。

まったく許智成ほど、周囲の人たちからこよなく愛され、MVP受賞の祝福を受けた人物はいないのではないか。

どこをとっても、斜に構えて見ても、誠実という言葉が浮かんでくる。自分の信じる道を迷うことなく突き進み、逆境をもその素直な心で吸収し、成長のパワーに変えてしまう。他者に対しては謙虚と尊重の心で接し、相手の心を温めることのできる人物である。

そんな彼が、ついに主役となって勝利の美酒を思いっきり飲み干す日を迎えたのだ。こんなに喜ばしいことはないではないか。

許智成選手、心よりおめでとう!

勝利の予感

今大会リラックスして臨む
団体トゥル決勝戦 入場前


全日本大会 団体トゥル5連覇中!!
(高麗チーム時代を含む)


団体マッソギ 決勝戦 (VS西東京)
先鋒戦 蘇秉秀選手を破る

団体マッソギ 西東京を破り、初優勝を飾る
優勝の瞬間


パワーブレイキング 優勝
ヨプチャチルギ 10枚 撃破
まずはMVP受賞おめでとうございます。
感想から聞かせてください。

すごく嬉しいのは確かなんですが、正直実感が湧かないんです。不思議ですが、大会の日もトントン拍子でうまく進んだ感じでした。

試合前からいつもと違う手応えのようなものがありました?

そうですね。いつも試合前日は眠れないくらいとても緊張するタイプなんですが、今回は違いました。短い時間ですが、ぐっすり眠れ、すがすがしい気分で朝を迎えられました。不安などまったくなく、いつでも戦える、そんな気分でした。自分を見て、アボジ(父)も感じたようです。今回はいけるんじゃないかと。

大会を前にアボジに何か言われましたか?

特には何も。いつものようにお茶を入れてくれました。

緑茶をですか?

はい。全日本大会の日は必ずボクの起床に合わせてアボジも早朝から起きてくれ、お茶を入れてくれるのが恒例のようになっているんです。お茶は邪気を沈めるという謂われがあるようでして。アボジは、ボクの顔を見るだけでその日のコンディションが分かるようです。今回は調子いいんじゃないか、今回は厳しい試合になるのではないかなど。今回は結果良しと感じていたようです。

すごいですね。息子の表情ひとつで感じとるって。アボジの良い予感が的中し、今大会はチソンデーになって良かったですね。

応援してくれた皆さんのおかげです。アボジをはじめ、ボクを育ててくれた師範たち、道場の仲間たち、そしていつも大きな声援を送ってくれる少年部のみんなにも感謝しています。

今回の勝因は何だと思いますか

これも不思議なんですが、実は体調を崩し、大会一週間前まで寝込んでいたため練習不足で、状況でいえば最悪だったんです。風邪に加え、疲労で体力も随分と落ちていたため、完治するまでに10日間を要しました。いつもなら、ラストスパートで猛練習をしていなければならない時期に、ダウンするとは内心とても焦りましたね。でも怪我の巧妙とはこういうことなんだなぁ、とつくづく感じました。休養を十分にとったことで、むしろ身体の動きが冴えているのです。残りの一週間は、落ちた体力を取り戻すためジムのマシーンで走り込みを中心としたメニューを組み、ダッシュなどで瞬発力を引き上げることに専念しました。あとはメンタル面での新たな取り組みにチャレンジしたのですが、それが功を奏したのかもしれません。

メンタル面でのチャレンジとは?

初めて座禅を組んでみたんです。以前よりずっと興味を持っていまして。精神面での集中力を高めるキッカケになればと思い、トライしました。インターネットで谷中霊園にある啄木道場というところを見つけ、二度通いました。座禅では、「結跏趺座」(けっかふざ)という足の組み方で40分間中333回のリズムで呼吸をするのが理想ということなのですが、これが想像以上にハードでして(笑)。

無の境地になれました?

まだまだそこまでには至りません(笑)。ただ集中力アップや平常心を保つことには役立つと思いますよ。ボクは試合を前にすると、とても緊張するタイプなのですが、今回は驚くほど緊張しなかったんです。やはり座禅効果かな(笑)。

メンタルの克服

団体戦 W優勝 東東京A代表
(荒川道場 指導員・有段者たちで構成)


キャプテンとしてチームを牽引
荒川道場 責任者としても活躍
 
荒川道場 指導員演武
2008年12月 国際親善 第5回荒川区大会にて
ITF-KOREA来日・大会参戦

許智成選手が本番に弱いタイプとはちょっと意外です。

緊張するタイプに間違いないでしょう。大会2、3日前から気が張って眠れないんですよ。もう心臓がドキドキして。大会当日の試合待ち時間では落ち着かず、スタッフに試合の順番を何度も確認してみたり、そわそわして気が散漫しています。試合中は恐怖心が前面に出てしまい、これまで納得のいく試合がなかなかできないでいました。

そう聞くと、ここ最近の許選手の試合は、周囲の目から見ても不完全燃焼に映りました。
なんだか試練の時期を迎えているような……。2006年の第17回全日本大会では怪我をされましたよね。

はい。2回戦の試合で眼底骨折の怪我をしてしまいました。このときも身体がガチガチで試合になってなかったと思いまます。相手に負けた以前に、メンタル面で自分に負けた結果だと受け止めています。

だから、変わりたかった。変わらなければならないと切実に思いました。精神力の強化が自分にとって一番のテーマでした。

ボクはボクサーのマイク・タイソンがとても好きで、彼を育てあげたトレーナーのカス・ダマトの言葉をいつも肝に銘じているんです。

「恐怖心というのは、人生の一番の友人であると同時に敵でもある。ちょうど火のようなものだ。火は上手に扱えば、冬には身を暖めてくれるし、腹が空いた時には料理を手助けしてくれる。暗闇では明かりともなり、エネルギーになる。だが、一旦コントロールを失うと、火傷をするし、死んでしまうかもしれない。もし、恐怖心をコントロールできれば、芝生にやって来る鹿のように用心深くなることができる」

ボクにとっては、緊張、恐怖心がキーワードで、これを克服することが自分のステップアップに繋がることだと思っています。最近ではメンタルトレーニングの本をよく読むようになりました。緊張の要因、緊張をほぐす方法など、研究していく過程で心理学にとても興味を持つようになりましたよ。

今回は恐怖心をうまくコントロールできた訳ですね。

はい。とてもリラックスできてて、いつの間にか大会が終わってしまったというか、実感が湧かない感じでした。自分が練習してきたことを試合で出して、歯車がうまく噛み合ってくれたようです。

2009年はチソンYEARに

1996年7月 第3回世界ジュニア大会(チェコ・プラハ)
 許智成選手(中3) トゥル1段の部 第3位 入賞
写真は大会「月刊テコンドー」(NO58・59) 特集ページ

1998年10月 ノースアメリカン大会(カナダ・オタワ)
 許智成選手(高2) トゥル1段の部 優勝
写真 左から4人目

2005年7月 第14回世界大会(オーストラリア・サンシャインコースト)
 許智成選手 トゥル3段の部 第3位

2007年11月 ITF-KOREA指導員セミナー 講師として参加
(韓国・ヤンピョン)

2008年12月 正統テコンドーセミナーを実施 85名
荒川区協会主催(事務局長 許智成)

今大会を振り返り、それぞれの競技についてお話ください。

トゥルでは決勝で負けましたが、自分なりに納得のいく試合内容ができたと思っています。とても集中していて、自分の持っているものを出し切れたのではないでしょうか。マッソギも準決勝で負けはしましたが、これまで練習してきたことを消化できたと思います。あとはさらにハードルを高めて努力していきたい。パワーは優勝できて本当に嬉しいです。ぜひ優勝したかった競技ですから。また、団体戦でトゥル、マッソギの両方を制覇できたことが格別に嬉しいです。これまでトゥルでは連覇してきましたが、マッソギでは西東京チームに一度も勝てずにいましたから。仲間で勝ち取った勝利は大きな励みになりますね。

スペシャルテクニックを除くすべての競技にチャレンジし、そして結果を残した。これならMVPはイケる!と思ったり?(笑)

メダル5つは自分だけだったので、一瞬、これはもしかしたら、と……(笑)。

記念すべき20回大会の主役になるとは! 2009年はチソンYEARになりそうですね。

今まで地味にやってきたので、主役ということに実感が湧かないのが正直なところです。少年部時代からボクの前には常にピョンスがいて、健二がいて、賞にはまったく縁がなかったものでして……。ただ、今大会でステップアップできたことで、自信になったことは確かです。

賞に縁がないと言いましたが、これまでにも活躍されていたと思いますよ。なんといっても許智成選手のトゥルは本当に素晴らしい! 昔の話になりますが、世界ジュニア選手権でトゥル銅メダルを獲得したときのことが思い出されます。

1996年にチェコで開催された第3回世界ジュニア選手権大会ですね。

そうです。当時、中学3年生だった許選手が学校で短い休み時間の合間にもトゥルの反復練習をするほど、トゥルが好きで堪らないようなお話をされていて、すごく印象的だったんです。この少年はずっとテコンドーを続けるんだなと思わせるオーラのようなものがありました。

そうでしたか(笑)。

あと、そのころとまったく変わらないのが驚きなんです。成長してないという意味ではなくて、当時の純粋さがそのまま色褪せず残っていることがスゴイ。多感な思春期にこんなにも素直で、真っ直ぐに自分を表現できる少年の存在に驚いていたのに、大人になっても変わらず、あのときのまま心が澄んでいる。だから、許智成選手は周囲の人たちから愛されるのでしょう。今回の活躍は、みんな待ちに待っていたことと思います。

なんだか褒められ過ぎて、恐縮です。ただ、やっとみんなに恩返しができたような気持ちでいます。荒川道場を任されるようになり、指導者として常に稽古生の模範でありたいと思ってきました。まだまだですが、少しはみんなの声援に応えることができたのなら嬉しいです。

許選手は荒川道場設立当時の第一期メンバーのひとりですよね。まさに荒川道場の歴史とともに歩んでいるんですね。

不思議な縁を感じます。アボジから武道を薦められ、探しているときに、ちょうど地元に荒川道場が設立され、アボジがどうせやるなら民族の武道がいいということで入門しました。先に入っていた幼なじみの李誠一や現在日本ハムで活躍している森本稀哲(ヒチョル)たちとともに楽しく練習しました。

そういえば、森本選手のテコンドーの試合、今でも覚えてますよ。当時中学生でマッソギがとても強かった。ずっと続けていたら、間違いなくチャンピオンクラスでしょう。野球でも何でもオールマイティーで、本当に素晴らしい才能の持ち主ですね。

   人生のターニングポイント

2008年8月 トンイルマダン演武
荒川区地域でのテコンドー普及活動に全力で取り組む

2009.3.11 荒川区教育委員会褒賞 贈呈式に出席
荒川道場 横尾有耶1段(高1) スポーツ部門にて表彰

第16回世界大会(ロシア・サンクトペテルブルグ)に
向けて更なる飛躍を!
少年部から荒川道場で育った許選手が、現在ではその道場の指導者として活躍されている。関係者にとっては感慨深いことと思います。現在、指導者の立場で感じている点、心がけていることはありますか。

もっと男らしい大人にならなければならないと思っています。指導することは本当に難しいと、やればやるほど身につまされます。成年部の指導では、年配の稽古生が自分に対し接しづらそうにしているときも感じます。指導者として、老若男女問わず信頼してもらえる存在になれるように、もっと人生勉強を積んでいかなければならないと切実に思っています。

いま、27歳のこのときが自分にとってターニングポイントだと思うんです。選手としてもそうですが、一人の人間としてもっと成長しなければならない。いまの頑張り、生きざまがこれからの自分にとってとても重要な要素になります。そんな意味で、三年前に圷政治副師範の紹介で出会った「神輿の会」は自分を大きく変えてくれた大切な存在です。

「神輿の会」とは?

地元の祭りはもちろん、他の地域の祭りにも参加し、神輿を担いでいる仲間の集まりなのですが、とにかく参加している人たちのハートが熱い。年齢で言うと、一番若い自分の27歳から43歳の様々な職業の人たちが集まっています。ここでは上下関係が徹底していて、本音で付き合わなければならない。建前を言って格好をつけたり、堅苦しいことを言うのは厳禁。みんな本当に男らしく、潔く、そして何より愉快な人たちばかりです。参加当初はボクも自分を出し切れずにいましたが、もまれるうちに変わり、今では一人前の仲間として認められているかな。全日本前にも体調が悪かった自分を気遣い、会長が食事に誘って激励してくれました。これからも人との出会いを大切にし、多くのことを学び、成長していきたいと思っています

素晴らしい人たちとの出会いを通して一回り大きく成長した許智成選手、これからのさらなる活躍を期待しています。
では最後に、10月に開催される世界選手権に向けての抱負をお話ください。

まずはパワーブレイキングでの優勝を目指し、悔いのない試合をしたいと思います。これまでマッソギ、トゥルの世界チャンピオンは誕生していますが、パワーでは未だいません。だから、日本初の世界チャンピオンになれるように、応援してくれているみんなの期待に応えるため、精一杯戦ってきます! また、団体でも日本のトゥルの素晴らしさを世界に見せたいと思っています。

■許智成選手の熱い情熱で、ぜひ夢を実現してください! 世界選手権での健闘を祈っています。


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