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20 回全日本大会 特別企画

Special  Interview Part4


20回全日本テコンドー選手権大会

優秀選手賞 
金 恵 順

       (キン・ヘスン)

28歳/1段/東京・足立興野道場
テコンドー歴 5年 

△第20回全日本大会戦績
・女子マッソギスーパーマイクロ級 優勝
・女子団体トゥル 優勝
・女子団体マッソギ 優勝

△過去の国内大会主な戦績
・第18回全日本大会
 女子マッソギS・マイクロ級 第
3
・第11回関東大会
 女子マッソギS・マイクロ級 準優勝

過去の国際大会主な戦績

・第4回アジア大会 女子トゥル1段 準優勝

男子に劣らぬスピードと抜群の運動能力で、メキメキと頭角を現した金恵順。溢れるエナジーを注ぐが如く、彼女は最多出場ともいえる勢いで、国内の各大会に出場してきた。その努力が実り、全日本チャレンジ三度目にして、ついに頂点に立ったのだ。

女子スーパーマイクロ級という最激戦区を制し、団体でもダブル優勝に輝く。その活躍が評価され、師である姜昇利副師範とともに優秀選手賞を受賞し、所属道場にも花を添えた。

奈良岡和子指導員、姜昇利副師範直伝による高い技術を受け継ぎ、日本テコンドー界の女子期待の一人として成長を遂げた金恵順。次なる目標、世界大会での飛躍に期待がかかる。

技術と情熱受け継ぐ


第20回全日本大会 スーパーマイクロ級 初優勝

第20回全日本大会 団体女子マッソギ (VS西東京)
勝利の後、メンバーたちとハイタッチ

東東京代表で出場。 団体戦トゥル、マッソギ W優勝

東東京代表 喜びのガッツポーズ

2008年1月 第52回昇段審査にて 黒帯取得
所属道場の姜昇利副師範と喜びを分かち合う

足立興野道場の仲間たちと
■ 20回全日本大会女子マッソギでは、全階級で新チャンピオンが誕生したことが印象的でした。その立役者の一人が金恵順選手で、団体でもトゥル、マッソギのダブル優勝を飾り、忘れられない日となったのではないでしょうか。

はい。全日本大会での初優勝に、優秀選手賞までいただき、感無量でした。前回は準々決勝戦で敗退したので、とても悔しい思いをしました。これまでは「勝てたらいいな」くらいの消極的な気持ちでしたが、今回は「絶対勝ちたい」という強い思いが芽生え、それが前面に出せたことが良かったと思います。

■ これまで「勝てたらいいな」という気持ちだったとは意外です。金選手のスピーディーで気迫溢れる試合を見る限り、とてもそのようには見えません。

私の性格的な部分が大きいのですが、絶対勝つという執念のようなものが足りないことが選手として欠如している点だと思います。

■ 今回の優勝で、所属道場の先生である姜昇利副師範からお褒めの言葉はありましたか。

はい。「今までの努力が実って良かったですね」と声をかけていただきました。姜昇利副師範は結果よりも内容重視で評価される方なので、これまで試合に勝ってもあまり褒められたことがなくて(笑)。だから、今回の一言はなおさら嬉しかったです。

 こんなに活躍されている金選手が褒められないとは、姜副師範は金選手の才能を見込み、真に強い選手に育て上げようとしているのではないでしょうか。

私はメンタル面が弱いので、マッソギの練習ではよく注意されています。興野クラブはほとんどが男子なので、練習も男子相手にマッソギを組みます。そうなると、相手の蹴りやポイントを取られることを怖がってしまい、距離を取り過ぎてしまうんです。これはずっと先生から指摘されてきたことで、今大会でもその傾向は出ていたと思います。

今後ステップアップするためにも、メンタルの強化が重要課題になると思います。

 でも課題を抱えつつ今回優勝したことは、これまで積み重ねてきた努力の賜物なのではないでしょうか。

今大会で成長できた点は、これまでと違い、工夫する大切さを知ったことです。自分の中で大きな壁だった木村志穂選手、飯田菜生選手に勝つために、二人の試合をビデオで徹底的に研究し、対策を練りました。それが功を奏し、結果に結びついたのだと思います。ただし、準決勝も決勝も僅差での勝利だったので、自分が主導権を握り、試合を制することが今後の課題だと思います。

そして何よりも、今回の優勝、今の私があるのは、姜昇利副師範と奈良岡指導員のおかげというべきで、少しは恩返しできたのではないかと安堵しています。

 お二人共にとても喜んでいると思いますよ。この二人が金選手をテコンドーの世界へ導き、選手として育てたわけですよね。

そうです。テコンドーをはじめたキッカケは、当時同じ職場に勤めていた姜昇利副師範の勧めによるものでした。最初はただ単に運動不足解消のために、興味本位で始めましたが、道場の仲間たちとの出会い、姜副師範のテコンドーに対する熱い情熱に共感し、自分もどんどんテコンドーが好きになっていったようです。

当時、姜副師範は仕事が終わった後、荒川道場へ自主練習に通っていて、それに私も同行し、練習をしていました。その過程で姜副師範のテコンドーに対する熱い情熱が私にも乗り移ったようです。私は、12年間バスケに明け暮れた青春時代を過ごし、それこそ体育会系の気質なので、基本的に熱血の人が大好きなんです。だから、先生の熱い魂に感化され、ツボに嵌ったような感じで、気がつけば、テコンドーに熱中していました。

奈良岡マジック


奈良岡和子指導員との出会いが金選手を大きく変える
ハードなマンツーマン練習で飛躍的な成長を遂げた

初めて参加した国際大会は全てが刺激的だった
2008年4月 第4回アジア大会(カザフスタン・アルマトイ)
奈良岡コーチとJAPAN女子メンバーたち


2008年8月 成年夏合宿にて(千葉・御宿)
姜昇利副師範より指導を受ける


2007年5月 ASC大会  荒川・興野メンバーたちと

2008年4月 アジア大会(韓国・仁川空港にて)
似た者同士? 朴禎祐副師範と

■ そして金恵順選手の運命を決定付けたもう一人の存在として、奈良岡和子指導員との出会いがあるわけですね。奈良岡指導員とのマンツーマン練習を通して、金選手が飛躍的な成長を遂げられたと聞きました。

私が黄帯のころ、自主練習の時間に奈良岡指導員に声をかけていただき、一緒にミット蹴りをするようになりました。正直言うと、道場の練習よりこの自主練のほうがハードで、吐きそうになるくらい延々と蹴り続けましたね。

いろいろなバリエーションというよりは、ひとつの蹴りが身体に染み付くまで蹴ることをテーマに、かなりストイックな練習をしました。優に1〜2時間は蹴っていました。

また、奈良岡指導員はとても褒め上手でして、それに乗せられ、気がつけば、こんなところまで来てしまったという感じです。Its奈良岡マジックですね()

■ 奈良岡指導員との超ハード練習を積み重ねる過程で、自分の成長を実感したのではないでしょうか。

本当は「はい」と力強く答えたいところですが、実際は、なかなか結果を出せず、自信を失いかけていました。試合に出てもいつも一回戦負けをしていて、また一回しか試合できなかったな、とガックリしている自分しか記憶にありません(笑)。その度に奈良岡さんから「次に結果が必ず出るから」と励まされ、それが心の支えでした。緑帯や青帯のころは、早々勝てるものではないですが、やはり一回も勝てずにいると、次の試合に出るにはとても勇気がいるものです。負けても試合に出場し続けたのが今の自分に繋がっているのだと改めて実感しています。

■ 金恵順選手はとても運の強い方だと思います。日本のテコンドー界において女子トップ選手として君臨し、輝かしい実績を残してきた奈良岡指導員との濃密な練習時間を過ごしてきたわけですから。奈良岡指導員から学んだことの中で、一番心に残っていることは何ですか。

ストイックさを学びました。あそこまで自分を追い込める女性に出会ったことがありません。奈良岡指導員の強さの理由はここにあると思います。今も昔も最強の女王だという話を耳にしますが、まさにその通りです。

■ 金選手にとって奈良岡さんはどんな存在ですか?

師匠です。また、人生の良き先輩でもあり、尊敬する友です。友と言うにはおこがましいですが……。奈良岡指導員に出会っていなければ、今の自分はないと思います。

また、国際大会の女子コーチとしても活躍されている現在の姿を通して、私たち女子にとって手本であり、道しるべのような存在だと思います。

■ 金選手がテコンドーをする上で最も影響を受けた人物として、姜昇利副師範、奈良岡指導員以外にもいますか。

朴ソンファ師範と朴禎祐副師範です。朴ソンファ師範は、初出場したアジア大会の監督で、強化練習のときにいろいろアドバイスをいただき、非常に勉強になりました。また、朴禎祐副師範は私のことをいつも気にかけてくれ、兄のような存在です。その人間性がとても好きですね。

■ そういえば、朴禎祐副師範と金恵順選手はどこか似ているような感じがします。大らかな雰囲気がとても……。

副師範に対し、失礼かもしれませんが、同じ空気を感じます(笑)。

世界へはばたけ!


第4回アジア大会 女子トゥル1段 準優勝

2008年7月 第8回埼玉県大会
絶妙なタイミングでカウンターを放つ


2008年12月 第5回荒川区大会
国内大会に積極的に参戦、快進撃が続く


第20回全日本大会の主役として活躍した金恵順選手


今後の金恵順選手に大注目!!
■ 金選手は年間最多出場じゃないかと思わせるほど、大小関係なく殆どの試合に出場されていますよね。

基本的に試合が好きなんですよね。楽しいと感じるから、出てしまうんです(笑)。

マッソギでは微妙な間合いの駆け引きがワクワクします。相手との騙し合いの攻防が面白い。いつも騙されてばかりですが……(笑)。でも相手のウラをかいた瞬間というのは、面白いほど綺麗に蹴りが決まるんですよ。

一般的に女子の試合は、華麗な技の攻防と表現するにはまだ遠いと思われています。男子のように、観ている人に凄いと思わせるような試合がしたいと常に思っていますが、まだまだその域には程遠いので、もっと成長できるよう努力あるのみです。

 金選手の試合でのファイトにはいつも驚かせられていますが、マッソギをするとき、緊張感や恐怖心はないですか。

先ほどもお話しましたが、私はメンタル面が弱いので、試合ではとても緊張するタイプです。今回の全日本でも緊張し過ぎて全く眠れませんでした。負けたらどうしよう、怪我をしたら嫌だな、とつい思ってしまう。でもこんなマイナス思考の自分に負けて、試合に負けることがまた嫌で、もう自己嫌悪に陥ります。矛盾していますが、メンタルは弱いくせに、とても負けず嫌いなんですよ(笑)。

今大会は、自分がチャレンジャーだということを言い聞かせ、とにかく全力を出し切ることに集中しました。何もせずに負けるのだけは避けたかった。その甲斐あってとても良いコンディションで試合に臨むことができたので、メンタル面でもそれが反映され、結果を出せたのだと思います。

 金選手は昨年初めて国際大会を経験されましたね。カザフスタンで開催された第4回アジア大会。トゥル1段で銀メダルを獲得するなど、堂々たる戦いぶりでした。

初の国際大会なので、とても興奮しました。夢にまで見た舞台に立てるのかと思うと勝ち負けというより、自分の持っているものを全て出し切りたいという思いがモチベーションとなって、最後まで集中して戦えたと思います。

海外でテコンドーの世界を肌で感じられたことは、とても素晴らしい経験でした。トゥル決勝で朝鮮の選手と対戦しましたが、その気迫には圧倒されました。試合をしながら感じるんです。勝負に対する執念のレベルが違うと……。私に足りないものはこれだと、改めて痛感させられました。

また、アジア大会に向けた強化練習が私の財産にもなりました。男女共に良い仲間たちと練習で汗を流し、お互いを高めあう経験は、私の糧になっている思います。

■ 次はいよいよ世界大会ですね。金選手にとって初めて味わう世界の舞台が待っています。

とても楽しみにしています。自分の年齢的にそうチャンスはないと思うので、日本の代表として恥ずかしくないような試合をしたいと思っています。チャレンジャーとして自分が積み重ねてきたものを全て出し切れるよう、精一杯戦ってきます。

■ では最後に、金恵順選手の目標、夢についてお話しください。

私のテコンドー生活は家族や道場の仲間、周りの方々の支えなしには成り立ちません。特に、母にはとても助けられ、感謝しきれません。将来、そんな母親になるのが夢です。

また、テコンドーを続けるうえで女性は様々な局面で継続することが難しいと思いますが、多くの方にテコンドーの楽しさや魅力を伝えられる立場でありたいという希望を持っています。

選手としては、男子に負けないレベルの、スピーディーで華麗な試合、テコンドーの醍醐味を肌で感じてもらえるような試合ができるよう、日々精進していきたいと思っています。



  金恵順選手を育てた二人の恩師のコメント

奈良岡和子指導員

金恵順選手はとても練習熱心で、自然の流れでミット蹴りのサーキットトレーニング風メニューを一緒にこなすチームとなり、汗を流した日々が懐かしいです。このメニューは蹴り方や蹴り足の処理の仕方など、一定のルールを設けた徹底した反復練習で、 私自身がずっとこだわっていた練習でもあり、決して楽しい内容ではないのに、よく不満や疑問も言わずについて来てくれたと思います。

金選手は運動神経が抜群によく、精神面では体育会的な縦社会もきちんと身に付いているため、上からのアドバイスを素直に聞ける精神面での長所が常に彼女のレベルを上げ、能力面を相乗的に引き上げているのだと思います。

私との練習は基本中の基本です。その後の成長は本人の自覚と向上心の賜物だと思います。今は姜昇利副師範のもとで、より実践に磨きをかけて結果を残し、一時代を築いてほしいと思います。

世界大会は28歳である現時点のレベルを確認する絶好の舞台だと思います。試合運びも慎重な選手なので、世界大会で彼女のスタイルが吉と出ることを願います。

姜昇利副師範

金恵順選手は非常に練習熱心で、常に努力を怠りません。努力に裏付けられた実力やセンスも十分あり、その中でも男子に追いつけるスピードと試合を自分の流れに持っていくための駆け引きを常に考えて練習や試合をしているという二点は、女子選手の中で秀でていると思います。
今後の課題は、メンタル面での成長と自信をつけることだと思います。練習量や経験を積めば自信は自然について来るものです。自信がつけば、試合でもゆとりが生まれ、緩急がつき、落ち着いた状態で、相手に対しベストな動きができると思います。全日本での結果を大いに自信にしながらも、それに慢心せず、積極的に経験を積んでいってもらいたいですね。

金恵順選手にとっては初の世界大会です。足立興野道場の二人が、全日本優秀選手賞に輝いたことを誇りとし、世界の舞台でも代表に恥じない試合内容で良い結果が出ることを期待しつつ、世界を肌で感じ、大きな経験を積んでもらいたいです。