■ 金選手は年間最多出場じゃないかと思わせるほど、大小関係なく殆どの試合に出場されていますよね。
基本的に試合が好きなんですよね。楽しいと感じるから、出てしまうんです(笑)。
マッソギでは微妙な間合いの駆け引きがワクワクします。相手との騙し合いの攻防が面白い。いつも騙されてばかりですが……(笑)。でも相手のウラをかいた瞬間というのは、面白いほど綺麗に蹴りが決まるんですよ。
一般的に女子の試合は、華麗な技の攻防と表現するにはまだ遠いと思われています。男子のように、観ている人に凄いと思わせるような試合がしたいと常に思っていますが、まだまだその域には程遠いので、もっと成長できるよう努力あるのみです。
■ 金選手の試合でのファイトにはいつも驚かせられていますが、マッソギをするとき、緊張感や恐怖心はないですか。
先ほどもお話しましたが、私はメンタル面が弱いので、試合ではとても緊張するタイプです。今回の全日本でも緊張し過ぎて全く眠れませんでした。負けたらどうしよう、怪我をしたら嫌だな、とつい思ってしまう。でもこんなマイナス思考の自分に負けて、試合に負けることがまた嫌で、もう自己嫌悪に陥ります。矛盾していますが、メンタルは弱いくせに、とても負けず嫌いなんですよ(笑)。
今大会は、自分がチャレンジャーだということを言い聞かせ、とにかく全力を出し切ることに集中しました。何もせずに負けるのだけは避けたかった。その甲斐あってとても良いコンディションで試合に臨むことができたので、メンタル面でもそれが反映され、結果を出せたのだと思います。
■ 金選手は昨年初めて国際大会を経験されましたね。カザフスタンで開催された第4回アジア大会。トゥル1段で銀メダルを獲得するなど、堂々たる戦いぶりでした。
初の国際大会なので、とても興奮しました。夢にまで見た舞台に立てるのかと思うと勝ち負けというより、自分の持っているものを全て出し切りたいという思いがモチベーションとなって、最後まで集中して戦えたと思います。
海外でテコンドーの世界を肌で感じられたことは、とても素晴らしい経験でした。トゥル決勝で朝鮮の選手と対戦しましたが、その気迫には圧倒されました。試合をしながら感じるんです。勝負に対する執念のレベルが違うと……。私に足りないものはこれだと、改めて痛感させられました。
また、アジア大会に向けた強化練習が私の財産にもなりました。男女共に良い仲間たちと練習で汗を流し、お互いを高めあう経験は、私の糧になっている思います。
■ 次はいよいよ世界大会ですね。金選手にとって初めて味わう世界の舞台が待っています。
とても楽しみにしています。自分の年齢的にそうチャンスはないと思うので、日本の代表として恥ずかしくないような試合をしたいと思っています。チャレンジャーとして自分が積み重ねてきたものを全て出し切れるよう、精一杯戦ってきます。
■ では最後に、金恵順選手の目標、夢についてお話しください。
私のテコンドー生活は家族や道場の仲間、周りの方々の支えなしには成り立ちません。特に、母にはとても助けられ、感謝しきれません。将来、そんな母親になるのが夢です。
また、テコンドーを続けるうえで女性は様々な局面で継続することが難しいと思いますが、多くの方にテコンドーの楽しさや魅力を伝えられる立場でありたいという希望を持っています。
選手としては、男子に負けないレベルの、スピーディーで華麗な試合、テコンドーの醍醐味を肌で感じてもらえるような試合ができるよう、日々精進していきたいと思っています。
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