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16回世界大会 特別企画

Special  Interview Part1



16回世界テコンドー選手権大会

トゥル3段 準優勝 
船水 健二

       (フナミズ・ケンジ)

24歳/3段/指導員/荒川道場

テコンドー歴/18年

−国際大会主な戦績
・第16回世界大会 トゥル3段 準優勝

・第14回世界大会 団体マッソギ 第3位

・第3回アジア大会 トゥル3段 優勝

−全日本大会主な戦績
・第16回〜第20回全日本大会
 マッソギスーパーマイクロ級 五連覇

船水健二をイメージするとき、日本のテコンドー界ナンバーワンのスピードと攻撃力が第一に浮かぶ。

彼にスイッチが入ると、試合は瞬く間に早い展開へと進み、間髪入れず激しい攻防が転じられる。そのきらめくような強さが観る者の瞼に焼きつく。

少年部時代より蘇秉秀と共に両雄としてトップを駆け抜け、周囲の期待を一身に背負ってきた。小柄な少年が大きな相手を前にしても怯まず、アグレッシブに戦う姿は圧巻だった。

それは海を越えた国際大会でも同様で、人々は船水流の戦いに魅了される。

世界の舞台にチャレンジし続けた船水健二は、アジアチャンピオンの意地を見せ、トゥル3段で世界の銀メダルを獲得したのだ。

勝利の理由

3段トゥル決勝戦。息を呑む名勝負が繰り広げられた

決勝戦判定の瞬間。朝鮮選手の喜ぶ様が激戦を物語る


表彰式にて。世界大会銀メダル獲得!
恩師の一人、朴禎賢師範と喜びを分かち合う
世界大会銀メダル獲得、おめでとうございます。まずは感想からお聞かせください。

ありがとうございます。
世界大会での銀メダルはやはり嬉しいです。でもびっくりした気持ちのほうが強く、実感が湧かないというのが正直なところです。

決勝戦の相手は強豪の朝鮮でしたね

はい。でもアジア大会で朝鮮に勝って優勝しているので、勝てる気持ちはありました。

あれはまさに名勝負でしたね。延長戦に持ち込まれるほど僅差の勝負だったと思います。審判側も悩んだと思いますよ。

あのような場面はこれからもなかなか味わえないと思います。気合入りました!

本当に盛り上がりましたよね! 互いのチームの応援合戦でヒートアップ。トゥルの試合ではあまり見られないシーンですよね。
「ケンジ!ケンジ!」と会場中に大きく鳴り響いたみんなの声援、聞こえました?

もちろん聞こえましたよ。みんなの応援には随分励まされて、「絶対に勝つ!」という気持ちだけでした。

あのシチュエーションは船水選手ならではでしょうね。少年部時代から仲間たちの弟分的存在であり、ヒーローであり、そしてテコンドーひとすじに頑張ってきた船水選手だからこそ応援せずにはいられない。ああ、みんなから本当に愛されているんだなぁと感じました。

仲間たちには本当に感謝しています。ボクがここまで来られたのも自分を支えてくれているみんなのおかげだと身をもって感じています。ボクはそこからパワーをもらっているのだと思いますよ。

試合内容は本当に圧巻でした。あと一歩、次は優勝だけですね。この日は、日本がトゥルで4つのメダルを獲得。日本のレベルはトップクラスにあると改めて確信しました。

間違いなく日本のトゥルは世界を狙える水準だと思います。ボクにとって全日本大会のほうがある意味、厳しい大会なわけですから(笑)。

そうですよね。素晴らしい技術を持つ船水選手でも、ここ数年、全日本では優勝から遠ざかっていますよね。

特に3段は、層が厚いですから。前回の世界大会で優勝したスンリやチソン、ピョンスの三強がボクの優勝を阻むんです(笑)。

確かにこの三強は手強いですね(笑)。やはり日本のトゥルは贅沢なほど素晴らしいですね。

試練と成長

試合前 黄秀一監督とウォーミングアップ


マッソギの試合前。集中力を高める

長身の相手に対しても、船水流に積極的な攻撃を仕掛ける
(VSキルギスタン)
 
インターバル中。黄秀一監督にアドバイスを受ける。
黄監督は船水選手にとって恩師であり、目標である

団体戦。身長差を物ともしない果敢な攻めで試合を制す

JAPAN団体戦。 ポイントゲッターとして勝利に貢献

初出場のセルフディフェンス・ルーティンで華麗な技を披露

ルーティンの競技で力を出し切り、笑顔の船水選手

結束力抜群、深い絆を築いたJAPANチーム

第20回全日本大会 表彰式にて(2009.3.21−22)
田中・柴田選手と共に、世界を相手に戦い抜いた
トゥルの試合とは対照的に、マッソギではまさかの1回戦敗退。今大会での船水選手は本当に悔しそうなのが印象的でした。

待ちに待った日ですから。この日のために二年間頑張ってきたわけですし。それが一瞬にして終わってしまう悔しさ、歯がゆさで正直きつかったです。

今回は本当にメダルがほしかった。国際大会に9回もチャレンジして、個人戦では一度もメダルをとってないんですよ。ジュニア時代からチャレンジし続け、もう24歳です。この辺で絶対勝ちたい、優勝したいという気持ちがピークでした。また応援してくれているみんなにも応えたくて臨んだ大会だったのですが……。

これは黄秀一監督も言っていたことですが、試合内容はとてもよかったと思います。
船水選手らしいスピーディーな展開で、勝ち同等の見応えある戦いでした。
船水選手の試合は国際大会でも非常に評価が高くいつも注目されますよね。日本選手団の中で最も注目度が高かったキリギスタンの選手も船水選手のことを称えていましたよ。

そう言っていただけると嬉しいです。試合を振り返ると、これまで練習してきたことはできたと思います。ただもっと展開の早いマッソギ、スピードを活かした試合にしたかったのですが……。たとえ身長差はあっても蹴り合いに持ち込むことさえできれば、勝算はあったと思います。

今大会を通して一番強く感じたことは何ですか。

世界大会ではテクニック的に凄く上手いと思う選手でも次の試合で負けることがあります。そこで勝ち上がることの難しさ、競争率の高さを痛感しました。上には上がいるんですよ。世界のレベルは確実に、どんどん高まっています。そこで勝つためには、死に物狂いで練習するしかないことも分かりました。

あとは待つことも大事だという点です。

ボクが理想とするマッソギは先手必勝です。だからか、どうしても攻め続けてしまい、リスクを招くことも多い。特に国際大会ではそうです。海外勢は駆け引きがとても上手いですから。この点は自分でも分かっているつもりですが、どうしても自分が好むマッソギをしてしまうんですよね。

マッソギスタイルの修正ということですか。

自分の幅をもっと広げなくてはならないということを今回の大会で思い知らされました。ボクのスタイルはひとつに対しては強いけれど、同時に脆い部分もはっきりしています。自分のスタイルを活かしつつ、的確にポイントを取れるようにならなければならないと思います。

世界の壁は厚かったですか。

高いハードルですが、決して越えられない高さではないと思います。だから、それに届くだけの練習をすればいい。

勝っている選手たちに敵わないとは思いません。自分たちよりスピードが早いわけではない。蹴りが上手いわけでもない。身体能力に大きな差があるわけでもない。ただひとつ彼らが勝る点は、タイミングの技術だと思います。チャンスを絶対逃さない勝負勘と的確な反応が優れていると思います。でもテクニックの部分なら練習でクリアできます。

海外の選手で印象に残った選手は?

キリギスタンの選手たちは素晴らしいと思いました。身体の軸がしっかりしていて、バランスがとてもよく、試合の運び方が巧みです。彼らは試合の勝ち方を知っている。たくさんのパターンを持っていて、それが強みになっているんです。勝ち方の研究を繰り返し、それを実践するための反復練習を積み重ねているのだということが分かりました。

今回得た教訓、学んだことが今後の練習に活かされますね。

そうですね。ただ、それと同時に取り組まなければならないと思うことがあります。

それはなんですか。

自分だけが向上するのではなく、仲間たちと共に成長していくことです。そうでなければこれからも日本は世界の舞台で頂点に上ることはできないと思います。

力が拮抗した環境でこそ、互いに切磋琢磨し合いながら、どんどん成長できる。だから、自分たちが世界で吸収したことを後輩たちに伝えていくことからすべては始まると思います。

今のボクを真似しても世界では通用しない。だからボク自身が成長し、世界に通じるテクニックを身につけながら、同時に後輩たちを育てていく。このことは、自分たち世代がやらなければならない課題だと思います。

素晴らしいことを言いますね。立派なものです!なんだか船水選手が急に大人びて見えます。もう「ケンちゃん」なんて呼べませんよね(笑)。

こう見えても、職場ではしっかり者で通っているんですよ(笑)。ちゃんと社会人しています。

立派な社会人です!(笑)

とにかく二年後の世界大会に向けて頑張りますよ! そのためにも全日本大会で六連覇、七連覇を達成し、ピョンヤンでの世界大会では必ずメダルを勝ち取りたいですね。

今大会では個人戦トゥル、マッソギ、団体トゥル、マッソギに加えセルフディフェンス・ルーティンにも出場し、大活躍でしたね。

団体戦の練習は本当に頑張ったと思います。みんな社会人なので日々忙しいわけですが、工夫しながら時間をつくってトレーニングを積みました。キャプテンの田中彰選手が中心となってチーム内で深い絆が生まれたと思います。だからとてもいい雰囲気の中で試合ができましたし、試合内容も良かったと思います。

団体トゥルは、本番で最高の仕上がりになったのではないかと思います。ルーティンも初出場にしては合格の内容だったのではないでしょうか。JAPANチームの競技中、観戦者から「サムライ、GOOD!」という声が出るほど会場も盛り上がっていました。

初出場にしては内容的によくできたと思います。しかし、上位に残ったチームを見ると、洗練されていて、いろいろ工夫していると感じました。

今更ながらですが、ルーティンで主役を務めた船水選手の身体能力の高さには脱帽しました。これまで船水選手を称して「テコンドーの申し子」と綴ってきましたが、その思いは強まりましたね。テコンドーとの出会いはやはり運命なのでしょう。

努力の人

少年部時代は蘇秉秀選手と共にエースとして大活躍
写真は「月刊テコンドー NO58」(1996年8月号表紙)

第6回全日本少年大会MVPに輝いた11歳の船水健二選手

2004年12月 ピーターカップ(ロシア・サンクトペテルブルグ)
船水選手含むJAPANチームが団体トゥルで金メダルを獲得

2005年7月 第14回世界大会(オーストラリア・サンシャインコースト)
マッソギ・マイクロ級に出場し、積極的な攻防を繰り広げる

2006年11月 第3回アジア大会(インド・ニューデリー)
3段トゥルで強豪の朝鮮を破り優勝を飾る!

2009年3月 第20回全日本大会(東京・代々木)
マッソギスーパーマイクロ5連覇を達成!

第16回世界大会終了後、JAPANの仲間たちとともに
船水選手は少年部時代、蘇秉秀選手とともに二強として活躍していましたね。小さな身体で大人顔負けのスピード感溢れる激しい攻防を繰り広げる姿はじつに魅力的で、観る者を釘付けにしたのを覚えています。

少年部のころからマッソギがとても好きでした。6歳からテコンドーをはじめましたが、自分からテコンドーに夢中になったのは試合に勝つようになってからなんです。そのころから攻めのマッソギが好きだったようです。勝つときは子供ながらにして達成感があり、勝っていく過程でどんどんテコンドーが好きになりました。

ほとんどの大会に出場していましたよね。これは周囲の人たちが口を揃えて言っていましたが、船水選手ほど努力する選手はいない、優れた才能を持ちながらも努力を惜しまないと称えていました。そういえば、世界ジュニア、アジア、世界シニアに加え、各国のカップ戦など、じつに多くの国際大会に出場していますよね。

今回で9回目です。

印象的だったのは船水選手が高校時代、国際大会に出場するため、アルバイトに励んでいたという話です。

親に負担をかけたくなかったので……。自分が好きで国際大会に行くわけだから、自分が働いたお金で行かないと意味がないと思いました。

その考えは立派です。

でも振り返ると後悔することも多いです。今更ながらですが、学生時代、あんなに多くの時間があったのに、時間をなんて無駄に使っていたのかと。社会人になって仕事で多忙な日々を経験した今だからこそ悔やまれます。あのときだったら、今やるべき課題を消化する余裕が十分あったわけですから。

選手として、一人の人間として指針となっているものはなんですか。

ボクの好きな言葉は「継続は力なり」。

目標に向かって一歩一歩続けていくことは素晴らしいことだと思います。それは自信となり、力となり、喜びとなって、人を成長させてくれます。

練習量に自信があれば、コートに立ったとき、絶対負ける気がしない。そう勇気が湧くんです。その分、負けたときは悔しいですけど(笑)。でも、それがまたバネになる。

船水選手にとって、テコンドーの存在とは?

人間として成長させてくれる大きな存在です。テコンドーに出会い、続けていく過程で、自分の性格が変わりました。テコンドーをやっていると、何をしても自信が持てるんですよ。精神力も強くなって、どこへ出ても堂々としている自分がいる。すべてに影響を及ぼしてますね。

船水選手がいつも輝いている理由はここにあったのですね。自分がやりたいことに出会い、信念をもって努力を惜しまない船水選手の言葉に重みを感じます。

最後に、未来のチャンピオンを目指す少年、少女たちに向けてメッセージをください。

月並みの話ですが、練習をまじめに取り組むことが大事だということです。コツコツやっていけば、必ず上手になれます。練習では毎回テーマを持って集中することを心がけてください。

ウサギもコツコツ続けていれば、ぶっちぎりで勝っていました。サボったから負けたんです。強くなりたければ、努力を続けることです。

ボクの場合、先生に褒められたいがために頑張りました。

当時の先生は黄秀一師範ですよね。

はい。スイル師範は、怒らせたら本当に怖い存在でした。小学生時代のボクはヤンチャで、先生によく怒られ、道場の後ろに立たされていました。でもスイル師範に褒められたときは嬉しくて嬉しくて。スイル師範は怖かったけど、強くて格好良く、オーラのようなものがあったので、子供心に憧れがありました。厳しい先生のおかげで今の自分があるのだと思います。

今回の銀メダル獲得で恩師に少し恩返しができましたね。残りは2年後の世界大会で果たせることを期待しています。



          二年後の世界大会に向けて再スタートを切った船水健二選手。
                     今後の飛躍が期待される

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