■トゥルの試合とは対照的に、マッソギではまさかの1回戦敗退。今大会での船水選手は本当に悔しそうなのが印象的でした。
待ちに待った日ですから。この日のために二年間頑張ってきたわけですし。それが一瞬にして終わってしまう悔しさ、歯がゆさで正直きつかったです。
今回は本当にメダルがほしかった。国際大会に9回もチャレンジして、個人戦では一度もメダルをとってないんですよ。ジュニア時代からチャレンジし続け、もう24歳です。この辺で絶対勝ちたい、優勝したいという気持ちがピークでした。また応援してくれているみんなにも応えたくて臨んだ大会だったのですが……。
■これは黄秀一監督も言っていたことですが、試合内容はとてもよかったと思います。
船水選手らしいスピーディーな展開で、勝ち同等の見応えある戦いでした。
船水選手の試合は国際大会でも非常に評価が高くいつも注目されますよね。日本選手団の中で最も注目度が高かったキリギスタンの選手も船水選手のことを称えていましたよ。
そう言っていただけると嬉しいです。試合を振り返ると、これまで練習してきたことはできたと思います。ただもっと展開の早いマッソギ、スピードを活かした試合にしたかったのですが……。たとえ身長差はあっても蹴り合いに持ち込むことさえできれば、勝算はあったと思います。
■今大会を通して一番強く感じたことは何ですか。 世界大会ではテクニック的に凄く上手いと思う選手でも次の試合で負けることがあります。そこで勝ち上がることの難しさ、競争率の高さを痛感しました。上には上がいるんですよ。世界のレベルは確実に、どんどん高まっています。そこで勝つためには、死に物狂いで練習するしかないことも分かりました。
あとは待つことも大事だという点です。
ボクが理想とするマッソギは先手必勝です。だからか、どうしても攻め続けてしまい、リスクを招くことも多い。特に国際大会ではそうです。海外勢は駆け引きがとても上手いですから。この点は自分でも分かっているつもりですが、どうしても自分が好むマッソギをしてしまうんですよね。
■マッソギスタイルの修正ということですか。
自分の幅をもっと広げなくてはならないということを今回の大会で思い知らされました。ボクのスタイルはひとつに対しては強いけれど、同時に脆い部分もはっきりしています。自分のスタイルを活かしつつ、的確にポイントを取れるようにならなければならないと思います。
■世界の壁は厚かったですか。
高いハードルですが、決して越えられない高さではないと思います。だから、それに届くだけの練習をすればいい。
勝っている選手たちに敵わないとは思いません。自分たちよりスピードが早いわけではない。蹴りが上手いわけでもない。身体能力に大きな差があるわけでもない。ただひとつ彼らが勝る点は、タイミングの技術だと思います。チャンスを絶対逃さない勝負勘と的確な反応が優れていると思います。でもテクニックの部分なら練習でクリアできます。
■海外の選手で印象に残った選手は?
キリギスタンの選手たちは素晴らしいと思いました。身体の軸がしっかりしていて、バランスがとてもよく、試合の運び方が巧みです。彼らは試合の勝ち方を知っている。たくさんのパターンを持っていて、それが強みになっているんです。勝ち方の研究を繰り返し、それを実践するための反復練習を積み重ねているのだということが分かりました。
■今回得た教訓、学んだことが今後の練習に活かされますね。
そうですね。ただ、それと同時に取り組まなければならないと思うことがあります。
■それはなんですか。
自分だけが向上するのではなく、仲間たちと共に成長していくことです。そうでなければこれからも日本は世界の舞台で頂点に上ることはできないと思います。
力が拮抗した環境でこそ、互いに切磋琢磨し合いながら、どんどん成長できる。だから、自分たちが世界で吸収したことを後輩たちに伝えていくことからすべては始まると思います。
今のボクを真似しても世界では通用しない。だからボク自身が成長し、世界に通じるテクニックを身につけながら、同時に後輩たちを育てていく。このことは、自分たち世代がやらなければならない課題だと思います。
■素晴らしいことを言いますね。立派なものです!なんだか船水選手が急に大人びて見えます。もう「ケンちゃん」なんて呼べませんよね(笑)。
こう見えても、職場ではしっかり者で通っているんですよ(笑)。ちゃんと社会人しています。
■立派な社会人です!(笑)
とにかく二年後の世界大会に向けて頑張りますよ! そのためにも全日本大会で六連覇、七連覇を達成し、ピョンヤンでの世界大会では必ずメダルを勝ち取りたいですね。
■今大会では個人戦トゥル、マッソギ、団体トゥル、マッソギに加えセルフディフェンス・ルーティンにも出場し、大活躍でしたね。
団体戦の練習は本当に頑張ったと思います。みんな社会人なので日々忙しいわけですが、工夫しながら時間をつくってトレーニングを積みました。キャプテンの田中彰選手が中心となってチーム内で深い絆が生まれたと思います。だからとてもいい雰囲気の中で試合ができましたし、試合内容も良かったと思います。
■団体トゥルは、本番で最高の仕上がりになったのではないかと思います。ルーティンも初出場にしては合格の内容だったのではないでしょうか。JAPANチームの競技中、観戦者から「サムライ、GOOD!」という声が出るほど会場も盛り上がっていました。
初出場にしては内容的によくできたと思います。しかし、上位に残ったチームを見ると、洗練されていて、いろいろ工夫していると感じました。
■今更ながらですが、ルーティンで主役を務めた船水選手の身体能力の高さには脱帽しました。これまで船水選手を称して「テコンドーの申し子」と綴ってきましたが、その思いは強まりましたね。テコンドーとの出会いはやはり運命なのでしょう。
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