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21回全日本大会 コラム

蘇秉秀が魅せたテコンドーの醍醐味


蘇秉秀ならではの美しく力強いトゥルは洗練を極めていた。二年ぶりに優勝を決める

強く、華麗な蘇秉秀戦いに観客は酔いしれた


田中彰という壁を打ち破り、悲願の優勝を飾った須賀大輔

関西勢大活躍!ヘビー級の郭勝智と共にアベック優勝


七連覇の夢は断たれたが、日本テコンドー史に残る偉業を成し遂げた田中彰。その戦いに心より喝采を送りたい

王者、船水健二を相手に好試合を繰り広げた瀧本幸治

21回全日本テコンドー選手権大会は近年にない波乱含みの大会となった。前年度のチャンピオンが一回戦で敗れるというまさかの結果に驚いた観戦者は多かったに違いない。

もちろん、スーパーマイクロ級王者船水健二をはじめ、チャンピオン勢が連覇を更新し、王者の貫禄を見せ付けたことはさすが、というほかはない。

しかし、これまで次点に甘んじていた選手たちが奮起し、例年にない結果を残した点は特筆すべきであろう

波乱の展開、地方勢の躍進

特に、ライト級決勝戦で田中彰の七連覇を阻止し、悲願の優勝を飾った須賀大輔の活躍は賞賛すべきであろう。

六年連続で王座を堅守しつづけた田中を破るということは並大抵のことではない。

技術、メンタルすべてにおいて高い次元にいるチャンピオンから王座を奪うということはとてつもなく大変な挑戦である。それをやってのけたのだから、須賀は今までに味わったことのない深い自信を得たに違いない。

6年前に協会内弟子として修業を積み、同期の姜昇利とともに切磋琢磨しながら技術を磨いていった須賀は、その後、地元関西でテコンドー普及に努めながら着実に実力を蓄え、全日本でも毎回上位に勝ち上がる頼もしい存在に成長していた。

全日本への挑戦8回目にして手に入れた優勝は、彼のテコンドー人生においてターニングポイントとなる出来事になったのではないだろうか。

ヘビー級で初優勝を決めた門下生の郭勝智とともに、地元関西の選手たちに大きな刺激と目標を与え、間違いなく今後の関西勢の成長を促す大仕事をやってのけたと言えるだろう。 

一方、七連覇は達成されなかったものの、日本テコンドー史に残る偉業を成し遂げた田中彰には畏敬の念で拍手を送りたい。
彼なら必ずや来年の全日本でさらに進化した姿を見せてくれることだろう。

現に田中は今大会のトゥル1回戦でチャンピオンの姜昇利を破り、準優勝を飾るという結果を残しているのだ。
 

また、スーパーマイクロ級決勝戦で船水健二と素晴らしい戦いを繰り広げた瀧本幸治の躍進には驚きに近い感動があった。

試合全体を通して、全日本へ注がれた瀧本の豊富な練習量と確固たる自信が感じられた。

それはマッソギに限らず、トゥルでも数段階成長した姿を見せて3位入賞、パワーブレイキングに至っては初優勝を手にし、高い総合力を示してくれた。

広島の強豪として活躍する池本琢己とともに地元広島の牽引力となってほしい。


ライバル姜昇利との決勝戦を制し、四連覇を達成した蘇秉秀


日本のエースとしてテコンドーの醍醐味を表現した蘇秉秀

これぞ、蘇秉秀の試合

そして、トゥル、マッソギ、団体トゥルを制し、5年ぶりにMVPを受賞した蘇秉秀は、じつに彼らしい極上の試合を見せてくれた。

美しい動作と瞬間的に放たれる力強い動作が絶妙に調和された蘇秉秀のトゥル。
流れるような剛柔の動きは洗練を深め、あたかもひとつの「芸術品」のように感じられた。

マッソギでも自身のポジションを確固たるものにした。
ボディーバランスの良さや絶妙な駆け引きはさらに冴えを見せていたが、それに加えて今大会では、彼の持ち味でもある華麗な大技がふんだんに用意され、観る者を釘付けにした。

「代々木体育館の観客を沸かせる試合を意識して臨みました」

蘇秉秀の思いは、動きの隅々まで十分行きわたり、その試みは成功した。

彼の蹴り一つひとつに客席からはどよめきが起こっていたのだから。

これぞ、蘇秉秀の試合である。テコンドーの醍醐味を伝えられたことは、きっと彼にとってMVP以上に価値のあることだったのではないだろうか。


※PART-6は、師範演武をUPいたします。  ご期待下さい。
 
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