■MVPは第16回大会以来、2回目の受賞となりますが、これまでの試合と比較し、今まで以上の気迫を感じました。
今大会では、これまで自分を支えてくれた方々のために戦うという気持ちで試合に臨みました。
こんな緊張感をもって試合に出たのは生まれて初めてです。
■それは周囲に人たちに対する感謝の気持ちからですか。
はい。今の自分が存在するのは周囲の人たちのおかげです。
大好きなテコンドーに打ち込める環境にいて、代々木体育館のような大きな舞台で試合ができる。
こんな素晴らしい環境に恵まれ、幸せを感じています。
だから黄進首席師賢をはじめ、日本にテコンドーを普及し、支えてきた方々に恩返しがしたいと思いました。
自分が唯一できること、それはテコンドーの素晴らしさを自分の試合を通して伝えることです。それを今大会の目標とし、試合に臨みました。
■だからか、今回の試合では、蘇秉秀選手の真骨頂とも言える華麗な技がいつもより多く使われていましたね。
とにかく会場を沸かせるような試合をしたかった。
勝ちにこだわるよりも「魅せる」という意識を強く持ちました。
これは昨年の大会後の話ですが、厳斗一師範から自分の試合についての感想を聞かれたことがあるんです。
ボクが「良かったと思う」と答えると、「本当によかったと思う?」と問い直されました。
よくよく考えてみると、勝ちはしたけど、心の奥から満足できる試合ではなかったと思いました。
自分ができることを100%出し切れたのか。
自分らしい試合ができたのか。そう自問自答してみると、自信がないわけですよ。
だから、今年は一試合一試合が最後だという気持ちで臨みました。
自分の力を信じて、極限状態で持っているすべてを出し切ろう、と……。
■その思いは試合に十分反映されていたと思います。マッソギでは蘇選手の技が繰り出される度に、会場からはどよめきが起こっていました。
マッソギは最初から突っ走る気持ちで臨み、これまでの試合の中で一番いい内容だったと思います。
自分が持っているものを出し切り、自分らしい試合をする、そのイメージに近い動きができたので達成感があります。
こんな気持ちは第18回大会での朴ソンファ師範との決勝戦以来ですね。100%満足できる内容ではありませんでしたが、やり遂げたという思いがあります。
■大会4週間前に肋骨を骨折するアクシデントがあったということをまったく感じさせない動きはさすがです!
怪我の当初はまったく不安がなかったわけではありませんが、絶対優勝するという強い気持ちをモチベーションに、焦らず、いまできることに集中しようと努めました。
一週間は安静に過ごし、その後は無理のないトレーニングで筋力を維持しながら、最後にMAXの状態で練習に集中した結果、とてもいいコンディションで本番に臨めたと思います。
■試合全体を通して素晴らしいパフォーマンスでした。
そして決勝戦は昨年同様、姜昇利選手を迎えましたが、やはりライバル対決は面白い。
もう何度も戦っているので、互いの手の内も知り尽くし、とてもやりづらい相手だったのではないでしょうか。
多少やりづらい部分もあります。
姜選手にはかなり研究されていると思いますし。
決勝戦の1R目では自分のペースをつくれず、姜選手のほうが有利だと分かっていました。
でも負ける気は全くなく、2Rで絶対勝てると思っていました。
このまま自分のスタイルを貫けば、必ず勝てると信じていましたから。その矢先、インターバル中に少年部で教えている平間陽太くんが駆け寄ってきて「先生、頑張ってください!」と心配そうな表情で声をかけられましてね。
もうその一言にスイッチが入りました(笑)。
「陽太くんに心配されるような試合をしているのか」
なおさら自分らしい戦い方で絶対勝ってやる!
ひたすら攻めの一手で、強さが試合全体を呑み込むような戦い方で勝利するんだと確信ながら試合をしていました。
■それまでの試合以上に決勝戦は熱かったですね。
スイッチが入っているのが観ている側にも十分伝わりましたよ(笑)。
一方の姜選手からもこの一戦に賭ける熱い思いが伝わってきて、両者ともに闘志溢れる好試合だったと思います。
完全燃焼したのではないでしょうか。
一気に駆け抜けた爽快感を感じ、とても気分がよかったです(笑)。もちろん、これで満足してはいません。
新しい課題も見つかり、もっと練習を積んで成長したいと思っています。
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