−今大会を振り返り、どのような思いで試合に臨みましたか。
ベテラン大会出場は今回が5度目ですが、今まで結果を残してきた分、思ってい
た以上に自分の中にプレッシャーがあったように感じます。
一方で、自分の練習不足や気力、体力の衰えを、3ヶ月という短い強化練習の期
間で取り戻せるかどうかに不安を感じながら出場を決め、臨んだ大会でした。
カテゴリーもゴールドクラスに変わり、4段になって対戦相手はおそらく師範
クラス。連覇という意識はあまりなく、一からの挑戦のような気持ちで試合に臨
みました。
−前大会に続き、二度目のMVPという素晴らしい勲章をもらった感想を
お聞かせください。
正直、MVPというものは全く頭の中にありませんでした。
だから、閉会式で海外の選手と写真を撮ったり、Tシャツの交換をしたりして、
ほっとした気持ちの時に、突然自分の名前がコールされ、頭の中は「?」状態で
した。でも次第に「やった〜!」という実感が湧き、素直に嬉しかったです。
ただ、個人ではマッソギを落としてしまったので、今回初めて団体戦にも出場で
きたからこそ頂けた称号であり、チームメイトの山口選手、水藻選手がいればこ
そのMVPだったと思います。
−ベテラン大会において快進撃を見せていますが、年齢の壁を越えて活躍で
きる秘訣は?
これは、ベテランだからとか、シニア・ジュニアだからとかに関係なく、まずは
自分の身体を大切にすることが重要です。
私の場合は、2008 年のベラルーシでの大会の時に韓トレーナーと出会い、それ
からずっと自分の身体と向き合う方法を教えてもらってきました。
たとえば、基礎工事をしっかりやらなかった家は、すぐに歪みが出ます。そのま
ま住み続ければ、いつか傾いて住むこともできなくなってしまう。
身体も同じで、まず大事なのは正しい姿勢。ここをしっかり作り直した上で、
体幹トレーニングなどで更にベースとなる身体を作る。そうすると、体は正しい
本来の動きができるようになって、ラクに動けるようになり、怪我のリスクも減
っていきます。
練習ができない時でもベース作りだけは欠かさずに行ってきたことが、今でも少
しずつ成長できる秘訣だと思います。
そこには、上段をきちんといつまでも蹴れるようでいたいという目標があるから
でしょうか。
−前大会でMVPという頂上を登り、次なる目標、モチベーションを高める
ことが難しかったと思います。その点や乗り越えたプロセスについて教えて
ください。
じつは今大会に出場するかどうか、ギリギリまで迷っていました。
それでも出ようと思わせてくれたのは、ベテラン女子の選手が自分以外にも増え
たことでした。
初めての海外での試合を経験する選手を少しでもサポートできたらと考えました。
さらに、団体戦にも出場が決まったことで、自分が経験した表彰台の一番高い所
を、チームメイトの2人にも同じように経験して貰いたかった。
そういう目標ができると、自然とスイッチが入っていきました。
−次回大会の目標を教えてください。
2年後の大会に出るかどうかは、正直まだ分かりません。
次に選手として出る時は、「プラチナクラス」になるかも知れません。
10年後、選手として出ても恥ずかしくないように、日々精進していきます。
−日本や世界で活躍する女性テコンドー家として多くを経験している分、
体力、気力管理、技術ノウハウ、そして人としての深みも増していると思い
ます。そのような部分で、リーダーとして、指導者としての今後の抱負を語
ってください。
黄秀一監督と黄大勇師範、このお二人は、シニアの大会含めて7回の世界大会
で、必ずいてくれた存在で、本当に頼もしく安心できる存在でした。
姜昇利コーチは、選手としての経験も豊富で、初のコーチとは思えないほど堂々
としていました。
トレーナーの韓鈴蘭さんも遠征帯同の経験が豊富で、トレーナー以上の仕事をこ
なしていたのを間近に見てきました。
この最強とも思える4人でも、ジャパン選手のサポートをするには(特にアンダ
ー15の選手が多かったので)大変だっただろうと思います。
選手としてもまだまだ活躍してみたいと思う一方で、これから世界に出ていく選
手たちのサポートをする役もやっていきたいという気持ちもあります。
海外の選手たちは、本当にタフです。そして、明るい。
大きな声で歌い、大きな声で仲間を応援する。そして時には、隣に座った私たち
の国までも応援してくれます。
その明るさ、強さが、試合にも表れています。
日本の選手は海外の選手と比べても、技術の面で決して引けをとっていないはず
なのに、あと一歩及ばない。どこか気後れしている印象があります。
そのような自分が経験して、見てきて感じたことを、これから世界へ出ていく
選手たちに伝えられるようになりたいと思います。
スタッフの一員としても、これからも関わっていけるように、もっと自分の技術
、メンタルを向上させていきたいです。
また、もうひとつ、国際大会での審判という目標もあります。
今、国際審判として活躍する日本の師範の方々は、世界でもとても評価が高いと
聞いています。
その足元にも及びませんが、日本初の女性国際審判となってみたいとも考えて
います。
どちらにしても、もっとコミュニケーションツールである言語の勉強をしていか
なくてはなりませんね(笑)。
−最後に、後輩たちへのメッセージを
私は飛び抜けた運動神経もセンスもありませんし、背も標準より少々小さく、
手足も長くありません。それでも世界大会に出場する機会を得ることができまし
た。
その頃は、「もしも海外の選手と試合をするなら、自分の階級で勝負するよりも
、身長の高い選手との試合を経験しておかないと」と考えて、階級を上げて大会
に出ていました。
そうやって、目先の目標のもう一つ先まで考えてみてください。
自分の弱点やすべきことが見えてくるかもしれません。
人に教えられることをこなすだけでなく、自分を知り、自分なりの成長の仕方が
発見できると、テコンドーはもっともっと楽しくなるし、また長く続けていける
はずです。
まだまだ、一緒に頑張っていきましょう。
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